計画地は、準工業地域に存する畑の一部を宅地利用したものあり、周囲は、住宅、賃貸アパート、会社ビル、工場、コンテナ置き場等が混在している状況であった。また、残地とした畑や空き地が多くあり、孤立したような建ち方になることが想定できた。そのような状況の計画地に初めて立った時、直観として「積極的に周囲に開きたくない」と感じた。また、クライアントも開いた建ち方を望んではいなかった。その結果『外に閉じ、内で開く』ことが1つのテーマとなった。もう1つのテーマは『物理的にも感覚的にも広い空間』である。これは、クライアントからの要望でもあった。この2つのテーマから『外部に閉じつつ、内部で大きな広がりを持たせる』をコンセプトとして設計をスタートさせた。
全体構成としては、建物の1階南側に前庭、2階中央部に中庭を配置し、外壁により閉じることで、開放性や広がりを持たせつつ、プライベートな内外部空間を確保するというシンプルな構成をとった。1階前庭に面する南側を全面開口部とし、LDKから連続するかたちでデッキを設けることにより、視線の抜けや空間の広がりを与えている。また、2階中庭も同様にデッキや開口部を設け、内部空間との連続性を持たせつつ、物理的、感覚的な距離を内部空間に与えた。
LDKと玄関及びホールとの間には間仕切り壁を設けない平面構成とした。また、断面構成は、LDKの天井高を2600と不自然にならない程度に上げ、玄関及びホールを2階ホール及び子供室と空間的に繋がるよう吹き抜け空間としている。平面的、断面的な操作により内部空間でも連続性や広がりを演出している。加えて、玄関とホール・洗面と浴室等、他室を同一床材・同一色とすることや、ストリップ階段や鉄骨手摺の採用、内部建具を天井埋め込みにする等して、素材やディテールの面でも視覚的・感覚的な操作を行った。
『外部に閉じつつ、内部で大きな広がりを持たせる』というコンセプトに対し、平面構成、断面構成、素材、ディテール等のコントロールを行うことにより解決を試みた住宅である。
HOUSE-I
竣 工:2019年7月
所在地:神奈川県茅ケ崎市
用 途:専用住宅
構 造:木造2階建
規 模:約105㎡
施 工:バウムスタンフ
撮 影:花岡慎一
放 映:渡辺篤史の建もの探訪
掲 載:ArchDaily
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