今の自分の設計方法や作品を「より良くしたい」と悩むことは、設計者であれば、大なり小なりある悩みかと思います。
そんな悩みから、とある構造設計者との打合せ時に「私の作品についてどう思いますか?」と勇気を持って尋ねてみました。
どのような意見が出たのか、内容は伏せますが色々と的確なご意見を頂戴しました。ある種の否定ではあるのですが〝肯定的な否定〟でした。
否定には2種類あると思っています。
〝肯定的否定〟と〝否定的否定〟です。
〝肯定的否定〟は、その物事をより良くする為に、否定をすることです。「この部分を修正すればより良くなるのではないか」「この部分の考えを変えたら違う方向性が示せるのではないか」というアドバイスのような感じです。
〝否定的否定〟は「つまらない」「かっこ悪い」等、ただ単純に否定をすることです。いわゆる〝叩く〟行為がこれにあたるかと思います。そこから建設的な議論は生まれません。
〝否定的否定〟は、簡単だと思います。無根拠でいいですし、無責任でいい。あら探しをすればいいだけですから。
〝肯定的否定〟は、技術を要します。理解や知識や発想の引出がないとできないことだと思うのです。常日頃から色々なアンテナを張っていないと根拠を持って人を肯定する技術(個人的に〝肯定力〟と呼んでいます)は身につかないと感じています。
〝否定的否定〟を言われてもヘコみませんが〝肯定的否定〟を言われると、正直ヘコみます。その内容が的確であれば的確である程ヘコみます。いわゆる図星ってやつです。
でも、図星をついてくれたら感謝しなくてはならないと思っています。皆、大人になると良くも悪くもズルくなりますから、わざわざ図星をついてくれる人は貴重な存在だと思うからです。
ヘコむことも大切です。ヘコむことは受け止めているということです。ヘコむことは成長の糧です。他人の意見に耳を傾けなくなり独りよがりな考え方になれば、成長する機会を失います。
歳を重ねても人が〝肯定的否定〟をしやすいような人柄であり続けたいものです。