私たち設計者は、昔からの慣例で「先生」と呼ばれることがあります。ただ、皆さん昔からの慣例で「先生」と呼ぶだけであって、私のことを本当に「先生」と思っている方はいらっしゃらないと思っています。
「先生」と呼ばれたときは『先生と呼ぶのは止めて下さい』と伝えますし、先生稼業をするつもりもありません。
〝先生稼業をすると損〟だと思うからです。
現場サイドが「先生の言う通りにしておけばよい」と思う関係性なり、空気感を作ってしまうと、現場監督さんや職人さんからの意見が挙がりにくくなります。設計事務所の大きなメリットとして、設計と施工が分離してため、利害関係のない第三者同士であることがあります。つまりは、互いに指摘しあえる関係であり、ダブルチェックができる体制でもあるといえます。それは、対等な関係性を築いているからこそ成り立つものだと思うのです。
勿論、設計者判断として、決定を下すことは私の責務です。しかし、私だけしかアイディアを出さないとA案しか出てきません。そのA案を基に議論してもブラッシュアップされたA´案くらいまでにしか発展しません。ですので、現場では、自分の意見も発言した上で、現場監督さんや職人さんに『〇〇さんならどう思いますか?』と積極的に意見を伺うようにしています。現場監督さんや職人さんの経験値は高いものです。対等な関係を築けていれば「こういう方法もある」とB案やC案が出てきます。その様々な意見を総合的に判断して、最終決定していくことが合理的であり、良き住宅をつくるプロセスなのだと考えています。
まだまだ、私は若手の域だと思いますが、歳を重ねても、横柄にならず、先生稼業をしない設計者を目指していきたいと思います。