HOUSE-Nの実施設計を終えました。今回はその設計料に関することを少々述べたいと思います。
HOUSE-Nはローコスト住宅の価格帯に該当します。しかし、設計料もローコストになるかというと実はそうではありません。弊所では設計料を工事費の10%を基準に考えていますが、最低設計料を設けています。何故、そのようなボーダーラインを設けるかというと、3億円の豪邸であろうと、1000万円のローコスト住宅であろうと、設計監理に掛ける時間や工程は変わらないからです。工事費が低いからといって設計料を低くしてしまうと赤字になってしまうというのが実のところです。
多くの誤解があるのでこの場を借りて釈明したいのですが、設計料は〝デザイン料〟や〝アイディア料〟ではありません。設計事務所はプランやスケッチを描いておしまいではないのです。勿論、知恵をお金で買って頂くという意味合いがないわけではないですが、我々設計事務所は、1つの住宅の為に膨大な時間を費やします。敷地調査から始まり、基本設計では多くの検討や作図・模型作成をし、実施設計では膨大な図面を描き、工事が始まれば週に1回程度、現場に足を運びます。設計料は私達が動く〝人件費〟なのです。
加えて、ローコスト住宅や狭小住宅等は、金額は基、制限の多い中で試行錯誤します。想像以上の時間や手間を掛け、知恵を絞る必要があります。事実、HOUSE-Nでは通常50枚程度で収まる実施図面が70枚になってしまいました。増えた理由はズバリ〝構造〟です。
HOUSE-Nは、予算の関係から建坪を25坪以下と制限を掛けました。やや狭小住宅寄りのこの住宅に狭さを感じさせない、家族内に程良い距離感を与える等の理由で、7つのレベルの異なるスキップフロアを住宅内に散りばめ、2階建のワンルームのような構成にしています。その複雑な構造を組み立て、検討し、現場に伝える為には構造図を多く描く必要がありました。その〝構造〟の部分には基本設計段階から多くの検討時間を費やしましたし、今後、工事が始まってからの確認時間も多く取ることになるでしょう。
HOUSE-Nは、一例ですが、ローコストだからといって、設計が簡単になるわけでも、検討時間が短くなるわけでも、図面の枚数が少なくなるわけでも、現場に行く回数が少なくなるわけでもないということです。
勿論、高額な請求をするという意味ではありませんが、ローコスト住宅の設計料はパーセンテージにすると実はハイコストなのです。